「3日で再入院ですね」と言われてから3年。〜社会性の芽生えの記録〜

『iLife』を運営する
合同会社アイフォーミュラの代表社員 三宅基晴です。

グループホームというのは、居宅での支援や日中支援(作業所など)と違って
独立した『生活拠点』での支援となるので、実情が見えにくいサービスです。

そのため、「本当に我が子を預けても大丈夫か?」
「自分が入居した時の姿・生活がイメージできない」という猜疑心が出ると思います。

『8050問題』という言葉をご存知でしょうか。
80代の親が50代の子どもの生活を支えられなくなり、共倒れしてしまう、という問題です。

iLifeにも、この問題が出てから相談に来られる方が増えていますが、
グループホームの空き状況は全国的に見ても、大きくは改善しておりません。
(数自体は増加傾向ですが、それぞれのグループホームにはそれぞれの特色があるため、
自分にマッチしたグループホームの数は増えていないと言えます)

グループホームとの出会いは一期一会です。

今から、iLifeの支援録を(許可を得て)公開しますので、
ぜひ、猜疑心を持ったまま読み進めて貰えると嬉しいです。

 

NYさん、お母様との壮絶な歩み

知的・精神の重複障害(障害支援区分6)の方のストーリーです。

ここからは、お母様より伺った内容となります。

 

40年前の福祉環境

今(2022年)から40年前。

中学校には数週間しか行けず、会話も成り立たず、大きな声で騒ぎ、外出しては戻れず、無銭飲食をし、警察に保護されることを繰り返していたNYさんには、
現在とは違い、福祉支援環境が整っていなかったため、『居場所は無かった』そうです。

警察に保護されることが続くと「柱に括り付けておいて下さい」と言われたことが
今でも心に残っている、と仰られていました。

そこでお母様はNYさんを守るために、自宅の中で10年過ごされますが、
お母様の状況が変化し、支援できなくなったことで
精神病院に入院せざるをえなくなります。

 

30年前の精神病院

30年前の精神病院は想像を絶する状態であったとお母様は言われます。

  • 病室は6〜8人部屋
  • ベットの上で食事
  • お風呂は週2回だが、列に並べないNYさんは最後。最後には湯がない。

 

保健所からは「他の病院に移ったら」と言われたが、他に行き場所がないのが現実で
我慢するしかなかったそうです。

  • 身体拘束(ベットに縛り付ける)
  • 多量の薬で動けなくする
  • 拘束中は面会謝絶

あまりの辛い現実に、とうとうお母様が鬱で参ってしまったそうです。

「NYさんが社会にでて、生活できると思いますか?」

無慈悲な言葉が医療機関から投げつけられます。(注:30年前の話です)

 

地域の力を借りて、自宅生活に戻る

入院中に障害者手帳を取得できたことで、福祉サービスが受けられるようになり、退院。
地域の作業所などに支えられながら一緒に暮らせるようになりました。

しかし、NYさんは自宅と病院生活が長かったため、社会生活を身に付ける機会がなく
地域に溶け込むのは非常に難しい課題でした。

その後、10年間自宅と作業所での生活ができましたが
お母様が別の病気にかかり、その療養のためにNYさんは再入院。

入院しながら、作業所に通うのを4年続け…

とうとう、ここからグループホームiLifeが関わることになります。

当時の親子の夢は「グループホームに入ること」だったと言います。

 

『プロの素人』グループホームiLife

グループホームへの入居前準備は2017年12月から。

  • 入居検討【2017年12月〜2018年5月】
    カンファレンスを繰り返し、障害特性からの注意点などを把握
  • 体験入居【2018年5月〜7月】
    一泊二日や二泊三日の体験を断続的に入れて、本人の状態を確認。
    (iLife的にはこの時点で、問題なく受け入れ可能と判断)
  • 訓練入居【2018年7月〜11月】
    いつでも入院に戻れるように本人には「長期外泊訓練」と伝え、実質的に退院をする。
    合言葉は「目指せ3ヶ月!」

 

京都府、奈良県の数々のグループホームに断られ、
「3日でも保てば嬉しいですよね?」と病院関係者からお母様は言われておりました。

つまり、『ダメ元』で2018年7月よりiLifeで過ごし始めることになります。

 

ダメ元 iLifeの創業当時の評価

iLifeは2017年9月に障がい者グループホームをOPENする所からスタートしました。

運営者は、私『三宅』。
独立起業したのが2015年。2017年に法人設立。
その後、障がい福祉サービスに初参入という経歴です。

周りの福祉関係者の間には…
「トヨタ(大企業)に居たからと言って、しょせん福祉は素人。
あいつらに何ができる?福祉を舐めていないか」
という声があったようです。
(噂ですが)

しかし、創業当時より、三宅にはある一つの確信がありました。

 

利用者が望む『最大の価値』を提供する

結果的に言えば、
NYさんは2018年7月の入居後、現在に至るまで3年半の間、
障がい特性による入院は一度もありません。

かと言って、NYさんがグループホームに入った途端、落ち着いて
平穏無事に過ごせたから、という訳ではありません。

本当に色々なことがありました。(そして対策を取ってきました)

  • 暴言を大声で支援者にまくしたてる
    (新規スタッフは恐怖しました)
  • パニックになって消火器(の中身)をぶち撒ける
  • 水中毒であるため、あらゆる水(それがキレイとは限らない場所の水でも)を飲もうとする
  • コンセントに鉄芯のようなものを入れて、発火する
  • トイレに異物を詰めて、大修理が必要になる
  • 深夜に窓から外に出て徘徊する
  • パニックが落ち着かず、夜間起き続ける
    (他の利用者からクレームが入る)
  • 大声で叫び続け、隣の家の人が怒鳴り込んでくる
  • コンビニの備品がいつのまにかグループホームに置いてある
  • 鍵付きの扉が破壊され、中に保存してあったものが散乱する

 

もしかすると、「何故、強制退去にならないの?」と思われたかもしれません。
他ではもっと軽い障害特性で退去になる例もあると聞きます。

でも、そもそも『諦める』という選択肢がiLifeにはありませんでした。

 

何故なら…

障がい福祉は素人だから

 

ド素人だからこそ、福祉的なモノサシがなかったので
NYさんの症状が周りからみたら『重い』という、重い軽いの判断もありませんでした。

先入観がなかったため
『どうやったら、NYさんがNYさんらしく、楽しく生きて行けるだろうか?』
『NYさんの望みはなんだろう?』
という、理解のアプローチを自然に取ることができました。

その諦めずに、「理解 → 改善」のサイクルが機能したことで
NYさんが望む価値を提供できてきた結果が、
今の現状ではないかと考えています。

 

重度の地域移行成功例はあまり無いらしく、
主幹相談員、行政の方からは「奇跡だ」とまで言われましたが

嬉しくはあっても「奇跡は言い過ぎじゃないかな?」という感覚が残ります。

 

エゴを出さない。関係性を作る努力ができる人であれば障がい福祉は可能

私、三宅としては、障がい福祉サービスを5年経験した現在であっても
素人でも障がい福祉は可能、という確信があります。

老人介護などの介護技術は間違いなく素人では無理な領域が存在します。

ですが、障がい福祉は、『人の器』で勝負できるため、

  • 相手を理解し、関係性を作る努力
  • 自分のエゴを押し付けない

これを備えている人であれば、未経験であっても、適切な支援を行うことができると考えます。

ですので、iLifeでは
「他人の視点で見る訓練」
「自分の思い込みをハズす訓練」
「相手に合った価値提供の手段」
などを特に研修で伝え

『人間関係(コミュニケーション)のプロ』になることを奨励しています。

(注:各障がいの専門知識が全くいらない、と言っている訳ではありません。当然、必要です。)

 

福祉的なモノサシを用いて、
「この利用者は重度だから、○○だ」
「○○障害は、こうだよね」
と、決めつけや限界を支援者自身が作ってしまうのではなく

利用者目線で必要な支援に気付いていく、
利用者との関係性を深めていき、信用と信頼を共に創り上げて行く

この様な態度が現場で取れる支援者が増えて行けば
障害の程度が軽度であっても、重度であっても
良い支援に繋がっていくのではないかと考えています。

(とは言え、「エゴを出さない」というのは
 非常に難しい課題であることも理解しています。)

社会性が芽生えるキッカケになった支援

NYさんについては、全ての打ち手が上手くハマった様に見えるかもしれませんが、
そういう訳ではなく

常にトライアンドエラーの繰り返しでした。

そして、これは本当に“たまたま”なのですが、
「社会性が産まれる」キッカケになった支援がありますので
シェアしたいと思います。

どんな事例かと言うと、
土日勤務のスタッフが、保育園が休みなので子供(1歳)を連れて勤務・支援した
というものです。

NYさんは長い間、病院や自宅での生活を続けておりましたので
こういった「自分よりも弱い存在」との触れ合いの経験値がありませんでした。

写真:絵本を読んであげるNYさん

これは

他者の立場になって考える力 = 社会で協力し合って生きる力

が、産まれて来ている証拠だと思います。

本事例は、誰にでも当てはまることではありませんし、
誰もが真似(実践)できることでもありませんが、
一つの大きな「上手く行ったケース」だと思います。

 

iLifeのこれからの課題

本稿で上述した通り、
iLifeは未経験だったからこそ、「粘り強い理解のアプローチ」ができていました。

しかし、運営を始めてから5年経ち
良くも悪くも「障がいに対するモノサシ」ができてしまっている可能性も否めません。

iLifeとしては、
先入観を入れず『人間関係構築を楽しみながら』『利用者の理解ができる』人材を
育成し続けることが今後の課題と捉えております。

長くなりましたが、NYさんの「支援録」でした。

ご本人、ご家族、そして福祉現場の支援者の参考になれば幸いです。

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